着物は日本の民族衣装です。
日本人であれば、何かしら着物に魅力を感じるのではないでしょうか?
着物は昔、日常的に着用していましたが、生活様式の変化により着る機会が少なくなりました。
しかし、今でも人生の節目にあたる「七五三・成人式・結婚式」には着用する伝統文化の一つです。
着物は、流行に左右されにくく柄や素材で個性や季節感を楽しむことのできる魅力的な衣装ですが、着用にはいくつかのルールや格がありTPOに応じた適切な着用シーンが求められます。
格って堅苦しく感じるなぁ~
着物は「TPOに応じた格」「季節に応じた柄や素材」の組み合わせが大切なんだよ
では、大切とされるTPOに応じた着物の「格・種類・特徴・着物の魅力」をテーマに、日本の伝統的な着物の魅力について書いていきます。
着物の魅力
着物とは、どのようなものなのでしょうか?
- 職人さんの誇り
- 作品に込められた「技術」「こだわり」
- 先人の知識や経験を代々ひき継いだ繊細で芸術的な作品
- 沢山の工程に手間と時間をかけて作る贅沢さと価値
- 着る人がその技術やこだわりを肌で感じられる
- 着る人の「仕草」「言葉遣い」までを美しくする
たくさんの魅力をもつ着物は
知れば知るほど奥が深く、知れば知るほどその魅力に魅了され好きになり抜け出せなくなる
着物の魅力とは?
- 日本の海や山に囲まれた「豊かな自然」「四季の変化」が着物に表現されている
- 季節感を楽しめる素材や絵柄のものがあり、身に着けられる時期が限られている
日本人の繊細で卓越した職人たちのつくる着物や帯生地は、同じ種類の着物や帯だとしても「織り方・染め方・仕立て方」・「作家・生産地・制作方法」により全く違った作品に仕上がります。
なぜなの?
それは、職人の技術や技が一枚の着物には詰め込まれ結集され、着物の奥深さは計り知れません。
とはいえ「着物は高い」「着付け・お手入れが大変」「重いし疲れる」などと思われがちです。
しかし、着物にはそれに勝るすばらしい魅力が沢山あります。
また、着物には文化があり、それらは代々引き継がれています。
例えば、
なんて素敵なことなのでしょう。
着物の魅力は世代を超えて大切に引き継がれる
着物は流行が少なく、多少の体形の変化にも寄り添い長く着ることができます。
「お手入れ・管理」をしっかりとすれば、祖母から母へ母から娘へと何代にも渡り受け継ぐことができます。
飽きることなく代々引き継がれるのはなぜなのでしょうか?
それは、着物は今も昔も、たった一つの形だからです。
- 赤線にハサミを入れます
ほとんどが、繊維に沿って直線に裁断し使わなかった部分も切らず縫い込みます。
捨てる部分はほとんどなく再度、縫い糸を解き並べ替えるとまた反物に戻すことができるのです。
これもまた、着物の魅力の一つです。
柄や素材によって個性・季節感が楽しめる
「着物はたった一つの形」です。
着物は、先人が色や模様で変化をつけたことで、何万色と色が生まれました。
その色に付けられた名前がまた文学的で、日本人の精妙な感性のたまものです。
着物の模様は多数多様で芸術性に富んでいて「帯や小物」「着る人の個性・感性」で趣(おもむき)が変わります。
着物にはそれぞれの季節の装いがあり、自然の四季の移ろいに合わせて細かに装いを変えていきます。
着物は、個性を生かした洋装とは違った自分らしいお洒落が楽しめるのです。
内面から美をひきたててくれる
着物を着ると動きが制約されます。
例えば「物を取る時」「歩く時」「座る時」いつもとは違う所作が求められます。
着物を着ると、普段とは違った特別な所作や振る舞いに自然となっていき、言葉づかいも普段とは違い少し丁寧になり律されるのです。
つまり、着物は洋装では表現できない日本人ならではの凛とした内面の「美しさ・魅力」を引き出してくれます。
着物は、日本人の体型をカバーし魅力を引き出してくれる最も日本人に似合う装いなのです。
着物の種類
着物には「格・TPOに合った装い」があり「デザイン・色・生地」によってさまざまな種類に分けられます。
TPOに合う着物の格と種類
- 第一礼装…最も格式高い場面で着用
- 準礼装…礼装に準ずる格式でもう少し広いシーンで着用
- 外出着・街着…カジュアルな装い
- 普段着…お出掛け着
着物の種類 | 具体的な着物の名称 | 用途 |
---|---|---|
第一礼装(最礼装) | 打掛「白無垢」「色打掛」 黒紋付 黒留袖 振袖 | 公式な儀式、結婚式、お葬式などの特別な時に着用 |
略式礼装(準礼装) | 色留袖 訪問着 付け下げ 色無地 江戸小紋 | 結婚式のお呼ばれ、入学式、卒業式など「フォーマルだけど第一礼装ほどでもない」時に着用 |
外出着 | 小紋 絞り(しぼり) 御召(おめし) | 礼装ほど気負わず着用 洋服でいう「かしこまったワンピース」のような感覚 |
普段着 | 紬(つむぎ) ウール 銘仙(めいせん) 木綿(もめん) 浴衣(ゆかた) | ちょっとした外出、普段の生活で着用 洋服と同じような感覚できることができる |
それぞれの着物の特徴と着用シーン
打掛「白無垢」「色打掛」
【特徴】
- 「白無垢」最高格の着物で白一色で仕立てられている
- 綿帽子(わたぼうし)や角隠し(つのかくし)を合わせる
- 「色打掛」鮮やかな色をし、華やかな模様が入っていて頭には角隠しを合わせます
綿帽子は合わせられません
【着用シーン】
- 「白無垢」結婚式のみで着用
- 「色打掛」結婚式、披露宴でも着用可能
黒紋付(喪服)
【特徴】
- 主に喪の席で着用する光沢のない黒無地の生地に五つ紋が入った格の高い着物
- 葬式や告別式における全ての参列者の第一礼装
- お世話になった故人を偲び感謝の気持ちを込めて着用
【着用シーン】
- 葬儀式・告別式・お別れ会・お通夜
黒留袖
【特徴】
- 最高格でそろえて祝儀の装いに
- 「黒地」「裾模様」「五ツ紋」ほんどは一越縮緬(ひとこしちりめん)生地
- 「比翼仕立て」衿元や裾に白い生地を付けて重ね着に見えるに仕立てる
【着用シーン】
- 既婚女性、結婚披露宴で新郎新婦の母親や仲人、既婚の親族
- それ以外で着ることはほとんどありません
振袖
【特徴】
- 通常の着物より2倍ほどある長い袖
- 未婚女性の礼装として最も格の高い着物
- 格調が高く華やかな文様が描かれている
【着用シーン】
- 未婚女性、成人式・結納・結婚式のお呼ばれなど
袖の長さ
- 大振袖は115cm以上
- 中振袖は95cm~115cm以上
- 小振袖は85cm~95cm以上
色留袖
【特徴】
- 黒地以外の留袖、紋の数や仕立で着こなしの幅が広げられる
- 五ツ紋で比翼仕立てにすれば、黒留袖と同格の装い
- 一ツ紋に比翼なしなら訪問着と同じような感覚で楽しめる
【着用シーン】
- 結婚式(親族・主賓)・格の高いパーティ・記念式典・授賞式など
訪問着
【特徴】
- ほかの礼装に比べるとおしゃれの要素が強く未婚・既婚を問わずにきることができる
- 全体に模様が縫い目でつながっていて絵柄がつながる絵羽模様で華やか、共八掛
- ただし現在ではあっさりとした雰囲気なものや共八掛でないものもある
【着用シーン】
- 結婚式参列(親族・同僚・友人)・記念式典・パーティー・授賞式・祝賀会など
付け下げ
【特徴】
- 上前の衿元や裾は縫い目を避ける模様、八掛は無地やぼかしが一般的
- 訪問着に比べると控えめな柄行が多い
- 帯の格の上げ下げで、落ち着いた場所から華やかな場所まで着用できる
- 模様は上向きだけど絵羽模様ではない
【着用シーン】
- 記念式典・パーティー・祝賀会・新年会・七五三・入学、卒業式(母)など
色無地
【特徴】
- 柄のない単色染めの着物
- 「紋付き」礼装、紋無しがジュアルな装い
- 締める帯によって着物の格自体が変化する
- 地紋の有・無で格が変わり多様なシチュエーションで着用できる
【着用シーン】
- 記念式典・新年会・お宮詣り・七五三・入学、卒業式(母)など
江戸小紋
【特徴】
- 遠目には無地にも見える繊細な柄に染められた着物
- ごく小さな柄、シンプルで飽きがこない、手染めとプリントがある
- 小紋でありながら色無地と同格に扱われる
- 無地感覚の細かい型染
【着用シーン】
- 記念式典・新年会・お宮詣り・七五三・入学・卒業式(母)
小紋
【特徴】
- 着物全体に同じ模様が一定パターンで入った染めの着物
- 柄の種類が豊富
- さまざまなコーディネートを楽しめる
【着用シーン】
- お稽古・観劇・街着・友人との食事・気軽な同窓会など
絞り(しぼり)
【特徴】
- 染め技法の一種「布を糸で括ったり」「器具で挟んだり」「縫い絞ったり」して染料に浸し、防染し模様を表現
- 日本古来の伝統的な技法で、大変価値の高い着物
- 工程のほとんどが手作業、染め上がった布には独特の凹凸が現れるのが特徴、職人の時間も技術もかかる
- 総絞りの着物は値段が高いが格は小紋と同等
【着用シーン】
- お稽古・観劇・街着・友人との食事・気軽な同窓会など
- 総絞り「訪問着」「振袖」は、着物の形自体が格上、結婚式などのフォーマルシーンに着用する事もできる
御召(おめし)
【特徴】
- 織りの着物の中で最も格が高い着物
- 多くの縮緬が後染めなのに対し御召は先染め
- 生地にハリとしなやかさがあり型くずれしにくい着やすい着物
- 生糸は強い撚りがかけらた御召糸という糸を使って織ったもの、生地の表面に細かいシボがみられる
- 濡れると急激に縮む
【着用シーン】
- 小紋と紬の中間着で観劇・食事会・稽古など幅広く着用
- 紋を付けたり、格上の帯を合わせることで、パーティなど
紬(つむぎ)
【特徴】
- 織の着物、染めた糸を織って柄を出す
- 紬の生地には2種類節(ふし)と呼ばれる凹凸があるものとないものがある
- 模様が一定パターン、絵柄の輪郭がモザイク状
- 紬糸を使って作られているため、生地が丈夫で軽い
- 重要無形文化財に指定されている種類で価値の高いものでも格が上がるわけではないので注意が必要
【着用シーン】
- 基本的にカジュアルなシーン
- お稽古・観劇・街着・友人との食事・気軽な同窓会など
ウール
【特徴】
- 安くて丈夫
- 「保湿性」「撥水性」「伸縮性」が高い
- しわになりにくく動きやすい
- 汚れの原因となる泥や水滴、雨をはじき汚れにくい
- 100%ウールなら洗濯機で洗える
- ※虫がつきやすいので虫食いに注意保管には防虫剤が必須
【着用シーン】
- 普段着・気軽な外出など
銘仙(めいせん)
【特徴】
- 大正から昭和初期の女性に人気、縦の糸と横の糸を交互に織り合わせたことで作られた
- 平織の絹織物の一種で、絣の手法を用いている
- 経糸と緯糸の色を意図的にずらして織り、通常の平織では見られないにじんだような優しい色と柄
- 格は紬よりも下、浴衣よりは上のイメージ
【着用シーン】
- 普段着・気軽な外出など
木綿(もめん)
【特徴】
- 単位仕立てが基本
- 盛夏を除く、3シーズンで着用でき衣更えを気にせず着用
- 自宅で洗濯できるので汚れを気にせず気軽に着用
- 縮みやすく、しわが付きやすいのでお手入れには注意が必要
【着用シーン】
- 普段着・気軽な外出など
浴衣(ゆかた)
【特徴】
- 夏の着物の中でも最もカジュアルな着物
- 基本的に単衣仕立て、通気性が良い
- 元々は身分の高い方が湯上がりに羽織った着物が始まり
【着用シーン】
- 夏祭り・花火大会など
季節にあった着物の選び方
袷(あわせ)・単衣(ひとえ)・薄物(うすもの)
- 「袷の着物」 10月~翌年の5月(その年の気候によっては5月中旬まで)
-
裏地をつけて仕立てた着物で秋から春まで着用
- 【秋】10月~11月
- 【冬】12月~2月
- 【春】3月~5月
- 「単衣」 5月中旬~6月末・9月
-
裏地をつけずに仕立てた透けない着物で盛夏の前後に着用
- 【初夏】5月~6月
- 【初秋】9月~6月
- 「薄物」 7月~8月
-
裏地をつけずに仕立てた透ける着物でもっとも暑い盛夏に着用
- 【初夏】7月~8月
着物・帯の衣更え一覧表
「着物」「帯」「小物」は季節や素材により着用時期があります。
着物・帯・小物の衣更え一覧表を作成しました。
着用時期の参考にしていただければ嬉しいです♪
魅力的で素敵な着物文化を、少しでも多くの方に届けたいな。
おしまい